ふうばいけっこん
風媒結婚

冒頭文

或る理学士のノートから——     一 この望遠鏡製作所に勤めて、もう半年あまり経ち、飽性(あきしやう)である僕の性質を知つてゐる友人連は、あいつにしては珍らしい、あの朝寝坊がきちん〳〵と朝は七時に起き、夕方までの勤めを怠りなくはたして益々愉快さうである、加(おま)けに勤めを口実にして俺達飲仲間からはすつかり遠ざかつて、まるで孤独の生活を繰返してゐるが、好くもあんなに辛抱が出来たものだ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文學時代」1931(昭和6)年7月

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日