きゅうぶんにほんばし 09 もくぎょのはいぐう
旧聞日本橋 09 木魚の配偶

冒頭文

木魚(もくぎょ)の顔の老爺(おじい)さんが、あの額の上に丁字髷(ちょんまげ)をのせて、短い体に黒ちりめんの羽織を着て、大小をさしていた姿も滑稽(こっけい)であったろうが、そういうまた老妻(おばあ)さんも美事な出来栄(できばえ)の人物(ひと)だった。顔は浜口首相より広く大きな面積をもち、身丈(みのたけ)も偉大だった。 うどの大木という譬(たとえ)はあるが、若いころは知らず、この女(ひと)は

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 旧聞日本橋
  • 岩波文庫、岩波書店
  • 1983(昭和58)年8月16日