がちょうのいえ
鵞鳥の家

冒頭文

(満里子の手帳から——) 一 冬のお休みになつたら今年もまた兄さん達といつしよに赤倉のスキーへ行くことを、あんなに楽しみにしてゐたのに、いざとなつたら母さんが何うしてもあたしだけを許して下さらないのだ。 「お前さんはもう学生ぢやないんだから、そんな遊びごとに耽つてはゐられないよ。」 「今年はもう海水浴もお止めと云つてゐたのに夏のうち叔父様のところへ行つてゐる間にすつかり真つ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「婦人倶楽部 第十七巻第五号」大日本雄辯会講談社、1936(昭和11)年5月1日

底本

  • 牧野信一全集第六巻
  • 筑摩書房
  • 2003(平成15)年5月10日