うたえるひまで
歌へる日まで

冒頭文

一 蝉——テテツクス——ミユーズの下僕——アポロの使者——白昼の夢想家——地上に於ける諸々の人間の行状をオリムパスのアポロに報告するためにこの世につかはされた観光客——客の名前をテテツクスといふ——蝉。 「その愚かな伝説は——」 さあ歌へ〳〵、今度はお前の番だ! と攻められるのであつたが、何故か私には歌へぬのだ——だが、私は凝ツとしてゐられないのだ——酒樽の上に立ちあがつて喋舌り出し

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝春秋 第八巻第七号」文藝春秋社、1930(昭和5)年7月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日