ふつかかんのこと
二日間のこと

冒頭文

八月×日 ——蜂雀(コリブリ)の真実なる概念を単に言葉の絵具をもつて描かんと努むるも、それは恰も南アメリカの生ける日光を瓶詰となして、大西洋を越え、イギリスの空に輝く雨と降り灑がうとするが如き不可能事に他ならぬ——。 そんな章句を読みながら、いつかうとうと、眠ると、一羽の蜂雀が渺望たる海の上を飛んでゆく夢を見た。見渡すかぎり睦の影も見あたらず、船に乗つてゐる感もないのに、いつたい自

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝首都 第二巻第九号」黎明社、1934(昭和9)年9月1日

底本

  • 牧野信一全集第五巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年7月20日