ばしゃのうた
馬車の歌

冒頭文

佗しい村住ひの僕等が、ある日、隣り町の食糧品店に急用が出来て、半日がかりで様々な切端詰つた用事を済せた後に、漸く村を指して引きあげることになつた夕暮時の途すがらであつた。同行は、いつものやうに僕等と一緒に生活を共にしてゐる大学生のHとTと僕の細君と、そして村にあるたつた一軒の僕等がマメイドと称(よ)び慣れてゐる居酒屋の娘であるメイ子等であつた。 僕等は各自に食糧品で充たされたリユツク・サ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「若草 第六巻第十一号」宝文館、1930(昭和5)年11月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日