しゅくふくされたほしのうた アン エピソード フロム ザ フォレスト
祝福された星の歌 “An episode from the forest”

冒頭文

一 麓の村から五哩あまり、馬の背で踏み入る森林地帯の山奥——苔むした岩々の間を、隠花植物の影を浮べて、さんさんと流れる谿川のほとりに営まれた伐木工場の丸木小屋の事務所に、その頃私はアメリカ生れのフロラと共に働いてゐました。私達の夫々の父親(ダツデイ)達の共同の仕事だつたからです。たしか、私が、文科の大学生活を終へた同じ年のことで、何故か私は文学よりも、哲学に憧れを寄せはぢめて、身をもつて健や

文字遣い

新字旧仮名

初出

「蝋人形 第三巻第四号(四月号)」蝋人形社、1932(昭和7)年4月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日