こうしょくむ
好色夢

冒頭文

回想 父の十三回忌が一昨年と思はれ、たしかその歿後の翌年と回想される故指折れば早くも十星霜にあまる時が経ちしなり、故葛西善蔵氏が切りと余に力作をすゝめ、稿終るや氏は未読のまゝに故滝田哲太郎氏へおくられたるなり。その稿が幸ひにも大いに滝田氏の賞揚するところとなり、次々の作を滝田氏より多くの鞭韃を享けつゝ発表の期を得たるなり。最初の作「父の百ヶ日前後」また次の「悪の同意語」等の題名は滝田氏の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「中央公論 第五十巻第十号」中央公論社、1935(昭和10)年10月1日

底本

  • 牧野信一全集第六巻
  • 筑摩書房
  • 2003(平成15)年5月10日