ランプのたより
ランプの便り

冒頭文

一 「おや〳〵、もうランプを点ける頃なの、何とまあ日が短いことだらうね。」 すつかり掃除を済してピカ〳〵とする台ランプを抱へたユキ子が、静かに私の部屋に入つて来たのを見て私は、驚きの眼を視張つて云ひました。ユキ子は、そのランプを私の机の上に置くと、 「点けて行きませうね。」と云ふのです。 「どうぞ——」 ユキ子は手製のジヤンパアのポケツトからマツチを取り出して、手ぎは好く

文字遣い

新字旧仮名

初出

「若草 第五巻第五号」宝文館、1929(昭和4)年5月1日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日