ブロンズまで
ブロンズまで

冒頭文

追跡の話 Dと村長がR子のことで月夜の晩に川べりの茶屋で格闘を演じた。Dは四十歳の洋画家である。R子は川べりの小さな町で踊りと歌を売つてゐる町一番美しいスターで、Dの愛人である。 格闘の原因は何か? 僕は聞きもらしたが、次のやうな会話が僕の耳に入つて来る。(僕は、空々(くう〳〵)庵の主が、目の前に迫つた展覧会に出品する為の制作のモデルになつて、黙々と椅子によつてゐるのだ。——そのア

文字遣い

新字旧仮名

初出

「報知新聞 第一八九〇八~第一八九一一号」報知新聞社、1929(昭和4)年9月2日~5日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日