ファティアのはなかずら
ファティアの花鬘

冒頭文

一 私は卓子の上に飛びあがると、コップを持つた腕を勢ひ好く振りあげた——酒は天井にはねあがつた。 そして私は、 「花鬘酒(ブランブシウム)の栓を抜け!」 と叫んだ。——「踊子達よ、一斉に盃をとつて、あの舞踏酒の歓喜に酔へ。俺は、ピピヤスの傍らへ走つて、あの花籠を買つて来る、あれらの花が凋まぬ間にあの壺をあけて、ストーロナ産の花を盛らなければならない。飲め〳〵〳〵、そ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「近代生活 第二巻第一号」近代生活社、1930(昭和5)年1月1日

底本

  • 牧野信一全集第三巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年5月20日