ガール・シャイそうわ
ガール・シヤイ挿話

冒頭文

僕(理科大学生)は、さつき玄関でチラリと娘の姿を見たばかりで一途にカーツと全身の血潮が逆上してしまつて(註、ガール・シヤイを翻訳すれば、美しい女を見ると無性に気恥かしくなつて口が聞けなくなる病——とでも云ふべきであらう。)慌てゝ自分の部屋へ逃げ込んでしまつた。 「おーい、二郎、来ないか?」 兄貴が呼んだ。僕はゾーツとした。——斯う逆上すると、それが何んな原因に依る感情であるか(有頂天の

文字遣い

新字旧仮名

初出

「国民新聞 第一三九一九号」国民新聞社、1930(昭和5)年9月14日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日