とうきょうえきにてかんそう
東京駅にて感想

冒頭文

一 久しい間辺卑な田舎で暮した上句なので、斯うして東京に来て見ると僕は、何を見ても、何処を訪れても、面白く、刺戟が爽かで、愉快で〳〵、毎日々々天気さへ好ければピヨン〳〵と出歩いて寧日なき楽天家だ、金貨だつて? そいつはまあ無い日の方が多いけれど、無ければ無いで公園を散歩する、スポーツを見物する、友達のところからオートバイを借りて来て矢鱈に街中を駆け廻つて、気分を晴し、同時に見聞を広める……。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「時事新報」時事新報社、1930(昭和5)年6月27日、29日、30日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日