こうゆうひわ
交遊秘話

冒頭文

一 私が、G・L・マイアム氏から私の作品に寄せる最も好意ある手紙を貰つたのは昨年の冬の頃だつた。その後頻繁に手紙の往復をするやうになつてゐたが、初めて言葉を交す機会を得たのは今年の春頃の或る晩、偶然にも銀座裏の小さな酒場でゝあつた。私は怖ろしく酔ふてゐた。 「マキノ君? ——若しや君は、僕のマキノ君ぢやないかしら? 僕、G・L・マイアム——」 たしか彼が最も流暢な日本語で斯う云つ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「読売新聞」読売新聞社、1930(昭和5)年11月13日~15日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日