がいじょうスケッチ
街上スケツチ

冒頭文

明るいうちは風があつたが、陽が落ちると一処に綺麗に凪いで、街は夢のやうにうつとりとした。——円タクの運転手が、今年の冬は実に長かつた! と力を込めて話しかけた後に、然しまた、これからは事故が多くなるので、浮々(うか〳〵)しては居られない、事故では自転車が一番多い、居眠りをしながら走つてゐるのがあるのだから……。 「だが、今夜のやうな陽気だと、吾々もつい眠くなりさうだ。気をつけなければならない——

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝春秋 オール讀物号 第一巻第三号」文藝春秋社、1931(昭和6)年6月1日

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日