ゆきのひ |
雪の日 |
冒頭文
見渡すかぎり地は銀沙を敷きて、舞ふや蝴蝶((こてふ))の羽((は))そで軽く、枯木も春の六花((りくくわ))の眺めを、世にある人は歌にも詠み詩にも作り、月花に並べて称((たた))ゆらん浦山((うらやま))しさよ、あはれ忘れがたき昔しを思へば、降りに降る雪くちをしく悲しく、悔((くい))の八千度((やちたび))その甲斐もなけれど、勿躰((もつたい))なや父祖累代墳墓(みはか)の地を捨てゝ、養育の恩ふ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「文学界 第三号」1893(明治26)年3月31日
底本
- 新日本古典文学大系 明治編 24 樋口一葉集
- 岩波書店
- 2001(平成13)年10月15日