ふゆのおう
冬の王

冒頭文

このデネマルクという国は実に美しい。言語には晴々しい北国(ほっこく)の音響があって、異様に聞える。人種も異様である。驚く程純血で、髪の毛は苧(お)のような色か、または黄金色(こがねいろ)に光り、肌は雪のように白く、体は鞭(むち)のようにすらりとしている。それに海近く棲(す)んでいる人種の常で、秘密らしく大きく開いた、妙に赫(かがや)く目をしている。 己(おれ)はこの国の海岸を愛する。夢を

文字遣い

新字新仮名

初出

「帝国文学」1912(明治45)年1月1日

底本

  • 於母影 冬の王 森鴎外全集12
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年3月21日