かいがらついほう 017 いずみきょうかせんせいとさとみとんさん
貝殻追放 017 泉鏡花先生と里見弴さん

冒頭文

田山花袋氏は里見弴さんを評して「大正の鏡花」と呼んで居る。その他、雜誌や新聞にも「大正の鏡花」は散見した。云ひ出したのは田山氏か、別の人か、自分は知らない。無責任な雜誌や新聞の「大正の鏡花」呼ばはりには、ほめた意味の時もあり、輕く扱つた意味の時もあつたが、田山氏の場合は、明かにほめた意味では無かつた。恰も「文章世界」の投書家の小説を評して、「大正の花袋」だと云ふのと同じ程度のものであつた。

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「人間」1920(大正9)年2月号

底本

  • 水上瀧太郎全集 九卷
  • 岩波書店
  • 1940(昭和15)年12月15日