なんきょくのかいじ |
南極の怪事 |
冒頭文
一 この怪異なる物語をなすにつき、読者諸君にあらかじめ記憶してもらわねばならぬ二つの事がある。その一は近頃ヨーロッパのある学者仲間で、地球の果に何か秘密でも見出さんとするごとく、幾度の失敗にも懲りず、しきりに南極探検船を出しておる事。その二は、いわゆる歴史の黒幕に蔽われたる太古、ぼうとして知るべからざる時代に、今は蛮地と云わるるアフリカ州の西岸、東に限りなき大沙漠を見渡すチュス付近に、古代の
文字遣い
新字新仮名
初出
「中学世界」1905(明治38)年1月号
底本
- 日本SF古典集成〔Ⅰ〕
- 早川書房
- 1977(昭和52)年7月15日