かいがらついほう 016 にょにんすうはい
貝殻追放 016 女人崇拝

冒頭文

「お母さん、私は何處から生れて來たの。」 「それはね、遠くの遠くの方から鸛(こふ)の鳥が銜へて來て、家(うち)の煙突の中に落して行つたのです。」 西洋の子供も、自分達が何處から生れて來たかを訝かしがつて、執拗(しつつこ)く問ひただしては母親を困らせるさうである。まことにそれは、吾々が子供心に、飽迄も知らんと欲して、しかも遂に知る事の出來なかつた謎であつた。 物心のついた時には、既

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「三田文學」1919(大正8)年12月号

底本

  • 水上瀧太郎全集 九卷
  • 岩波書店
  • 1940(昭和15)年12月15日