しんきみょうへんをろんず
心機妙変を論ず

冒頭文

哲学必ずしも人生の秘奥を貫徹せず、何ぞ況(いは)んや善悪正邪の俗論をや。秘奥の潜むところ、幽邃(いうすゐ)なる道眼の観識を待ちて無言の冥契を以て、或は看破し得るところもあるべし、然(さ)れども我は信ぜず、何者と雖(いへども)この「秘奥」の淵に臨みて其至奥に沈める宝珠を探り得んとは。 むかし文覚(もんがく)と称する一傲客、しばしが程この俗界を騒がせたり。彼は凡(すべ)ての預言者的人物の如く

文字遣い

新字旧仮名

初出

「女學雜誌 三二八號」女學雜誌社、1892(明治25)年9月24日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1974(昭和44)年6月5日