しゅうそうざっき
秋窓雑記

冒頭文

第一 かなしきものは秋なれど、また心地好きものも秋なるべし。春は俗を狂せしむるに宜(よけ)れど、秋の士を高うするに如(し)かず。花の人を酔はしむると月の人を清(す)ましむるとは、自(おのづ)から味(あじはひ)を異にするものあり。喜楽の中に人間の五情を没了するは世俗の免かるゝ能(あた)はざるところながら、われは万木凋落(てうらく)の期に当りて、静かに物象を察するの快なるを撰ぶなり。   

文字遣い

新字旧仮名

初出

「女學雜誌 三三〇號」女學雜誌社、1892(明治25)年10月22日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1974(昭和44)年6月5日