えんせいしかとじょせい
厭世詩家と女性

冒頭文

恋愛は人世の秘鑰(ひやく)なり、恋愛ありて後人世あり、恋愛を抽(ぬ)き去りたらむには人生何の色味かあらむ、然るに尤も多く人世を観じ、尤も多く人世の秘奥を究むるといふ詩人なる怪物の尤も多く恋愛に罪業を作るは、抑(そ)も如何(いか)なる理(ことわり)ぞ。古往今来詩家の恋愛に失する者、挙げて数ふ可からず、遂に女性をして嫁して詩家の妻となるを戒しむるに至らしめたり、詩家豈(あに)無情の動物ならむ、否、其濃

文字遣い

新字旧仮名

初出

「女學雜誌 三〇三號、三〇五號」女學雜誌社、1892(明治25)年2月6日、20日

底本

  • 現代日本文學大系 6 北村透谷・山路愛山集
  • 筑摩書房
  • 1974(昭和44)年6月5日