しろまくわうり
白甜瓜

冒頭文

石の卷を出て大きな街道を行くと暫くして松林へかゝる。海邊であるが松は孰れもすく〳〵と立つて然かも鬱蒼と掩ひかぶさつて居る。街道は恰も此の松林を穿つて通じてあるやうである。暑い日光をうけた白い砂利が松と相映射して居る。此の日は朝から無理な歩きやうをした爲か足がだん〳〵に痛み出して居たので松の木蔭の草村へ※[#「蓙」の左側の「人」が「口」、379-5]を敷いて休んだ。兩掛の荷物を卸すと身體が急に輕くな

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 長塚節全集 第二巻
  • 春陽堂書店
  • 1977(昭和52)年1月31日