「かぜはかせ」
「風博士」

冒頭文

厭世の偏奇境(ベロナ)から発酵したとてつもないおしやべり(アストラカン)です、これを読んで憤らうつたつて憤れる筈もありますまいし、笑ふには少々馬鹿〳〵し過ぎて、さて何としたものかと首をかしげさせられながら、だんだん読んで行くと重たい笑素に襲はれます。この笑素は化学読本で御存じのあの酸素中の一原素の謂です。決してペーソスなんていふしやれたものではなくて、それはとても悠長なトアパイロン見たいな、出来損

文字遣い

新字旧仮名

初出

「文藝春秋 第九巻第七号」巻末折込みの「別冊文壇ユウモア」1931(昭和6)年7月

底本

  • 牧野信一全集第四巻
  • 筑摩書房
  • 2002(平成14)年6月20日