けいば
競馬

冒頭文

朝からどんより曇(くも)っていたが、雨にはならず、低い雲が陰気(いんき)に垂れた競馬場を黒い秋風が黒く走っていた。午後になると急に暗さが増して行った。しぜん人も馬も重苦しい気持に沈(しず)んでしまいそうだったが、しかしふと通(とお)り魔(ま)が過ぎ去った跡(あと)のような虚(むな)しい慌(あわただ)しさにせき立てられるのは、こんな日は競走(レース)が荒(あ)れて大穴が出るからだろうか。晩秋の黄昏(

文字遣い

新字新仮名

初出

「改造 第二十七巻第四号」改造社、1946(昭和21)年4月1日

底本

  • ちくま日本文学全集 織田作之助
  • 筑摩書房
  • 1993(平成5)年5月20日