やまさちかわさち
山さち川さち

冒頭文

一 昔、紀州(きしう)の山奥に、与兵衛(よへゑ)といふ正直な猟夫(かりうど)がありました。或日(あるひ)の事いつものやうに鉄砲肩(かた)げて山を奥へ奥へと入つて行きましたがどうしたものか、其日(そのひ)に限つて兎(うさぎ)一疋(ぴき)にも出会ひませんでした。で、仕様事なしに山の頂から、ズツと東の方を眺(なが)めて居ますと、遙(はる)か向ふから蜒々(うねうね)とした細い川を筏(いかだ)の流れて

文字遣い

新字旧仮名

初出

「金の船」キンノツノ社、1920(大正9)年1~2月

底本

  • 日本児童文学大系 第一一巻
  • ほるぷ出版
  • 1978(昭和53)年11月30日