えんぴつにっしょう
鉛筆日抄

冒頭文

八月二十九日 ▲黄瓜 松島の村から東へ海について行く。此れは東名(とうな)の濱へ出るには一番近い道なので其代りには非常に難澁だといふことである。磯崎から海と離れて丘へ出た。丘をおりるとすぐに思ひ掛けぬ小さな入江の汀になつた。青田があつて蘆の穗も茂つて居る。蘆のなかにはみそ萩の花がしをらしく交つて居る。畦を拾つて行くと田甫が盡きて小徑もなくなつた。仕方がないから楢の木の間を心あてに登つたら往

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「馬醉木」第四巻第一号、第二号、1907(明治40)年3月8日、5月25日発行

底本

  • 長塚節全集 第二巻
  • 春陽堂書店
  • 1977(昭和52)年1月31日