はまのふゆ
浜の冬

冒頭文

冬の日のことである。鰯の漁が見たかつたので知人の案内状を持つて九十九里の濱の網主のもとへ行つた。主人はチヨン髷の五十幾つかに見える。丁度まくれた栗の落葉が轉つて行くやうだといへば適切で物に少しの滯りもない人である。余の初對面の挨拶が濟むと一寸來て見ないかといふので跟いて行つて見たら、二三軒さきで棟上げの式を行ふ所なので丁度餅や小錢を撒いて居た。主人はいきなりいよつと呶鳴つて大勢の中へ飛び込んで揉ま

文字遣い

旧字旧仮名

初出

底本

  • 長塚節全集 第二巻
  • 春陽堂書店
  • 1977(昭和52)年1月31日