ゆめのくに
夢の国

冒頭文

一 雪の降る日でした。 吉(よし)ちやんは机について学課のお浚(さら)へをしてをりました。障子の立つてゐる室の内は、薄暗くて、まるで夕暮の様でした。外にはまだ盛んに雪が積るらしく、時々木の枝からさら〳〵と雪の落ちる音が聞えました。 「アヽ〳〵〳〵」 吉ちやんは大きな口をあけて、欠伸(あくび)をしました。ふと誰(だれ)やら自分を呼ぶ声がしますから、振り返つてみますと、暗い

文字遣い

新字旧仮名

初出

「赤い鳥」1923(大正12)年4月

底本

  • 日本児童文学大系 第一一巻
  • ほるぷ出版
  • 1978(昭和53)年11月30日