てんどう
天童

冒頭文

はげしい雨風の夜であります。山小屋の爺(ぢい)は、早く雨戸を立てゝ藁布団(わらぶとん)の中へもぐりこみました。枕(まくら)もとには、うす暗い置ランプがともつてゐます。時をり戸のすき間から風が吹きこんで来て、ランプの灯(ひ)はゆら〳〵と動きます。爺は寝床の中から細い象のやうな目つきで、危なく消えようとするあかりを眺(なが)めてゐました。 「もう消えてもいゝよ。」 と爺はつぶやきました。けれど

文字遣い

新字旧仮名

初出

「童話」コドモ社、1923(大正13)年9月

底本

  • 日本児童文学大系 第九巻
  • ほるぷ出版
  • 1977(昭和52)年11月20日