きつねのわたし
狐の渡

冒頭文

むかし、一人の旅人が、科野(しなの)の国に旅して、野路(のみち)を踏みたがへ、犀川(さいがは)べりへ出ました。むかうへ渡りたいと思ひましたが、あたりに橋もなし、渡も見えず、困つてをりますと、 「もうし、旅のお人。」 といふ声がします。見ると、いつどこからとも知らず、一人のうつくしい顔した子どもが舟をこぎよせてゐるのでした。 「渡しのコン助(すけ)といふものだが渡しの御用はないかな。」

文字遣い

新字旧仮名

初出

底本

  • 日本児童文学大系 第九巻
  • ほるぷ出版
  • 1977(昭和52)年11月20日