きしや
騎士屋

冒頭文

私(わたし)どもが小学四年生のときの受持は、牛島(うしじま)先生でありました。牛島先生は、色が黒くて目がギロリとして、いかにも怖さうな顔つきでしたが、笑ふと、まるで別の人のやうにやさしい顔になりました。 先生は、その年の春中学を卒業したばかりで、まだ大さう若い人でした。やがて南米へ行くのだと云(い)つて、英語の勉強をしてをられました。休み時間には一人教室へ残つて、厚い辞書と首引をしてゐる

文字遣い

新字旧仮名

初出

「原つぱ」古今書院、1928(昭和3)年4月

底本

  • 日本児童文学大系 第九巻
  • ほるぷ出版
  • 1977(昭和52)年11月20日