だいぼさつとうげ 35 いぶきのまき
大菩薩峠 35 胆吹の巻

冒頭文

一 宇治山田の米友は、山形雄偉なる胆吹山(いぶきやま)を後ろにして、しきりに木の株根(かぶね)を掘っています。 その地点を見れば、まさしく胆吹山の南麓であって、その周囲を見れば荒野原、その一部分の雑木が斫(き)り倒され、榛莽荊棘(しんもうけいきょく)が刈り去られてある。そのうちのある一部分に向って鍬(くわ)を打卸しつつ、米友がひとり空々漠々として木の根を掘りつつあるのです。

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 大菩薩峠16
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1996(平成8)年7月24日