いぼ

冒頭文

一 兄さんの松吉と、弟の杉作と、年も一つ違ひでしたが、たいへんよく似てゐました。おでこの頭が顔の割に大きく、笑ふと、ひたひに猿のやうにしわがよるところ、走るとき両方の手を開いてしまふところも同じでした。 「二人、ちつとも違はないね。」 とよく人がいひました。さうすると、兄さんの松吉が、口をとがらして、虫くひ歯のかけたところから唾(つば)を吹きとばしながら、いふのでした。 「違ふ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「牛をつないだ椿の木」大和書店、1943(昭和18)年9月

底本

  • 日本児童文学大系 第二八巻
  • ほるぷ出版
  • 1978(昭和53)年11月30日