しいのき
椎の木

冒頭文

がけの上のひろい庭に、大きな椎(しい)の木がありました。何百年たったかわからない、古い大きな木でした。根かぶが張りひろがり、幹がまっすぐにつき立ち、頂の方は、古枝が枯れ落ちて、新たな小枝がこんもりと茂っていました。朝日がさすと、若葉がさわさわと波だち、椋鳥(むくどり)や雀がなきたてました。 春さきのこと、あたたかいそよ風が吹いて、この椎の木も笑ってるようでした。 その根もとに、

文字遣い

新字新仮名

初出

「赤とんぼ」実業之日本社、1946(昭和21)年4月

底本

  • 日本児童文学大系 第一六巻
  • ほるぷ出版
  • 1977(昭和52)年11月20日