あくまのたから
悪魔の宝

冒頭文

一 或(ある)ところに、センイチといふ猟師がゐました。たいへん上手な猟師でしたが、或日(あるひ)、どうしたことか、何の獲物もとれませんでした。鉄砲をかついで、一日山の中を歩きまはりましたが、小鳥一羽、鼠(ねずみ)一ぴきも、見あたりませんでした。 「へんな日だ。今日はだめかな。」 さうつぶやいて、彼は家に帰りかけて、大きな森を通りかゝりました。もう日が沈んで、あたりは薄暗くなつ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「赤い鳥」1929(昭和4)年1月

底本

  • 日本児童文学大系 第一六巻
  • ほるぷ出版
  • 1977(昭和52)年11月20日