いぬのはちこう |
犬の八公 |
冒頭文
一 或(あ)る山奥の村に、八太郎(はちたらう)といふ独者(ひとりもの)がゐました。呑気(のんき)な男で、皆のやうに一生懸命に働いてお金をためることなんか、知りもしないし考へもしないで、のらくらとその日その日を送つてゐました。食物がなくなると、日傭稼(ひやとひかせ)ぎに出たり、遠い町へ使ひに行つたりして、僅(わづ)かの賃金を貰(もら)つてきて、それで暮してゐました。 その八太郎が
文字遣い
新字旧仮名
初出
「童話」コドモ社、1926(大正15)年7月
底本
- 日本児童文学大系 第一六巻
- ほるぷ出版
- 1977(昭和52)年11月20日