かぜをひいたおねこさん
風邪をひいたお猫さん

冒頭文

あるところにお猫(ねこ)さんとそのおかみさんがありました。それはそれは立派なおヒゲをもつてゐたので、二人は自慢でしやうがありません。毎朝、起ると、すぐに鏡の前へ行つて、そのヒゲに油をつけて、それを毛織の切れでよくみがきました。まるで、そのヒゲはナイフのやうに光りました。 けれども、二人があんまり自慢するので、初めのうちは、 「まあ、御立派なおヒゲでございますこと。」と会ふたびに言つ

文字遣い

新字旧仮名

初出

「子供之友」婦人之友社、1933(昭和8)年2月

底本

  • 日本児童文学大系 第二六巻
  • ほるぷ出版
  • 1978(昭和53)年11月30日