こおろぎのし |
こほろぎの死 |
冒頭文
ある日、うす寒い秋でしたのに、一匹のこほろぎが単衣(ひとえ)を着て、街へ仕事をさがしに出掛けましたが、此間(このあひだ)までつとめてゐた印刷工場で足の上へ重い活字箱を落としてけがをして首を切られ、けがをした足は益々(ますます)ふくれるばかりで、どこにも雇ひ手はありませんでした。夕方になつたのか身体(からだ)中が寒くなつたので家(うち)へ帰りかけますと、突然頭の上に、汚い冷い水が一杯浴びるやうに掛つ
文字遣い
新字旧仮名
初出
「少年戦旗」戦旗社、1929(昭和4)年9月
底本
- 日本児童文学大系 第二六巻
- ほるぷ出版
- 1978(昭和53)年11月30日