つきみのゆうべ
月見の夕

冒頭文

うちからの出が非常に遲かツたものだから、そこ〳〵に用は足したが、知合(しりあひ)の店先で「イヤ今夜は冴えましようぜこれでは、けさからの鹽梅ではどうも六かしいと思つてましたが、まあこれぢや麥がとれましよう、十五夜が冴えりやあ麥は大丈夫とれるといふんですから、どうかさうしたいものでなどゝいふ主人の話を聞いたりして居たので、水海道を出たのは五時過ぎになツてしまつた、 尻を十分にまくし揚げてせツ

文字遣い

旧字旧仮名

初出

「馬醉木 第七號」1903(明治36)年12月23日

底本

  • 長塚節全集 第二巻
  • 春陽堂書店
  • 1977(昭和52)年1月31日