きと
帰途

冒頭文

一 三月二十七日——陸中のこの山間の村一帯に雪にまじって雨が降った。 その雨で、しだいに解けてきていた、薄い雪の下から黒い土がところどころに見え出した。——一冬通して、土の上をすっかりつつんで積っていた雪が、ところどころに黒い土を見せて来た。黒ずんだ色をして立っている山の林がどことなく灰色になって来た。しんとした、凍った空から、倦(う)んだような光を見せていた日光にも、しだいに春に

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 遠野へ
  • 葉舟会
  • 1987(昭和62)年4月25日