おかだくんのこと
岡田君のこと

冒頭文

巴里で岡田君と別れてから、もう十二三年になる。彼はその後、南フランスのゴオドといふ海岸へ移り住み、まつたく土地の人になつてしまつてゐるらしい。 巴里時代には、お互に貧乏であつたが、時とすると彼はその貧乏振りで流石の僕を感嘆させたものである。青山熊治君にも、やつぱりさういふところがあつた。しかし、岡田君は何時でも紳士然としてゐて、放浪者の惨めさを何処にもみせない一種の意地をもつてゐた。

文字遣い

新字旧仮名

初出

「第二回岡田糓滞仏油絵展目録」

底本

  • 岸田國士全集28
  • 岩波書店
  • 1992(平成4)年6月17日