ぐうかんいっそく |
| 偶感一束 |
冒頭文
賑やかな春の芝居も一向に心を惹かない。旅をしよう。旅をしよう。 旅と云へば、旅にゐて、都を想ふ、これも旅の楽しさ、なつかしさである。 まして、こゝ、灯は暗(くら)し、某々劇場の花ランプさへ、幻に、奇(く)しくも美しい。 今年は……と、癖になつてゐるのか、人さまに済まないと思ふのか、僕は、ふと、考へる。今年は……と。 せつせと芝居を見よう。第一に、築地小劇場と新劇協会とを欠かさずに見
文字遣い
新字旧仮名
初出
「時事新報」1925(大正14)年1月9日
底本
- 岸田國士全集28
- 岩波書店
- 1992(平成4)年6月17日