「あさまやま」のじょにかえて
「浅間山」の序に代へて

冒頭文

私は、嘗て雑誌に発表した作品を、更に単行本に纏める場合、大概、一度は躊躇するのである。これは私に限らず、多くの作家はさうであらうが、時を経て読み返すと、自分の書いたものぐらゐつまらぬものはないからだ。 だがしかし、兎に角、本にしておきたい欲望もあるにはあつて、ひと通り、手を入れたり目次を考へたりする。私は、これで何冊目の戯曲集を出すことになるか、恐らく、今度くらゐ内容の取捨に迷つたことは

文字遣い

新字旧仮名

初出

「劇作 第一巻第一号」1932(昭和7)年3月1日

底本

  • 岸田國士全集28
  • 岩波書店
  • 1992(平成4)年6月17日