たてやまのもうじゃやど |
| 立山の亡者宿 |
冒頭文
一 小八はやっと目ざした宿屋へ着いた。主翁(ていしゅ)と婢(じょちゅう)が出て来てこの壮(わか)い旅人を愛想よく迎えた。婢は裏山から引いた筧(かけい)の水を汲んで来てそれを足盥(あしだらい)に入れ、旅人の草鞋擦のした蒼白い足を洗ってやった。 青葉に黒味の強くなる比(ころ)のことで日中は暑かったが、立山の麓になったこの宿屋では陽が入ると涼しすぎる程の陽気であった。小八は座敷へあがるなり婢が来て湯
文字遣い
新字新仮名
初出
底本
- 日本の怪談(二)
- 河出文庫、河出書房新社
- 1986(昭和61)年12月4日