もちをくう
餅を喫う

冒頭文

町の酒屋では壮(わか)い主人が亡くなったので、その日葬式を済まして、親類や手伝いに来て貰った隣の人びとに所謂(いわゆる)涙酒を出し、それもやっと終って皆で寝たところで、裏門の戸をとんとんと叩く者があった。 その家には雇人も二三人おり、親類の者も泊り合せていたが、この二三日の疲れでぐっすり睡ってしまって知らなかった。ただ女房の藤代のみは、所天(ていしゅ)に別れた悲しみのために、一人の男の子

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1986(昭和61)年12月4日