とうかいどうごじゅうさんつぎ
東海道五十三次

冒頭文

風俗史専攻の主人が、殊(こと)に昔の旅行の風俗や習慣に興味を向けて、東海道に探査の足を踏み出したのはまだ大正も初めの一高の生徒時代だったという。私はその時分のことは知らないが大学時代の主人が屡々(しばしば)そこへ行くことは確(たしか)に見ていたし、一度などは私も一緒に連れて行って貰(もら)った。念の為め主人と私の関係を話して置くと、私の父は幼時に維新の匆騒(そうそう)を越えて来たアマチュアの有職故

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 岡本かの子全集5
  • ちくま文庫、筑摩書房
  • 1993(平成5)年8月24日