千住か熊谷かのことであるが、其処に某(ある)尼寺があって、その住職の尼僧と親しい壮(わか)い男が何時も寺へ遊びに来ていたが、それがふっつりと来なくなった。 尼僧はそれを心配して、何人(だれ)かその辺の者が来たならその容子を聞いてみようと思っていると、ある日その男がひょっこりやって来た。 「どうしたかと思って、心配してたのですよ」 「少し病気でしてね」 「もう好いのですか」 「