じごくのつかい
地獄の使

冒頭文

昼飯がすむと、老婆は裏の藪から野菊や紫苑(しおん)などを一束折って来た。お爺さんはこの間亡くなったばかりで、寺の墓地になった小松の下の土饅頭には、まだ鍬目が崩れずに立っていた。 老婆はその花束を裏の縁側へ置いて、やっとこしょと上へ昇り、他処(よそ)往きの布子(ぬのこ)に着更え、幅を狭く絎(く)けた黒繻子の帯を結びながら出て来たところで、人の跫音がした。表門の方から来て家の横を廻って来る静

文字遣い

新字新仮名

初出

底本

  • 日本の怪談(二)
  • 河出文庫、河出書房新社
  • 1986(昭和61)年12月4日